意匠権で商標不正登録に対抗する場合の権利擁護

意匠は、物品(物品の部分を含む)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって視覚を通じて美感を起こさせるもので、客体の表現形式上では商標権と重なるところがあります。

他人の意匠を使って、立体商標または図形要素を含む平面商標として権利化することは珍しくありません。

この場合、意匠の権利者として、どのような条件を満たせば権利擁護できるでしょうか。

中国『商標法』第三十二条の規定と『商標審査及び審理指南』の規定とは?

中国『商標法』第三十二条の規定によって、「商標登録出願は、先に存在する他人の権利を侵害してはならない…」とされています。意匠権は「先に存在する他人の権利」に該当します。

また、『商標審査及び審理指南』の規定によって、意匠権を主張する場合の適用要件は3つあります。

1、係争商標登録出願日と使用日前に、他人が既に意匠権を有しており、かつ、その意匠権が保護期間内にあること。
2、係争商標の登録・使用は、関連公衆を混同させ、先行意匠権者の利益を侵害するおそれがあること。
3、係争商標登録出願は、意匠権者の授権を受けていないこと。

判例を見てみましょう

ここでは、判例をご覧ください。
被異議申立人は、2020年8月25日付で第16類の「紙;文房具;学生読書矯正器、筆記具」等の商品において、商標第49199574号商標第49199574号 (以下は係争商標という)を出願しました。係争商標が公告された後、異議申立人は、先行意匠権(登録番号:ZL202030085792.3;出願日:2020年3月14日;登録日:2020年7月14日;正面図:登録番号:ZL202030085792.3 以下は引用意匠という)を主張し、異議を申し立てました。
審査を経て、以下3点が判明しました。

1つ目は?

1つ目は、先行意匠の出願日と登録日は、いずれも係争商標の出願日より早い上、保護期間内にあります。

2つ目は?

2つ目は、先行意匠の製品は、近視や猫背の予防、座る姿勢の矯正、視力・頸椎・腰椎を保護するためのロボットです。

一方で、係争商標の指定商品は、学生読書矯正器、筆記具などの事務用品であり、両者の機能や販売ルートは基本的に同じで、同種または類似の製品にあたります。

係争商標商標第49199574号 は平面図ですが、その構図は先行意匠の正面図登録番号:ZL202030085792.3 と類似しています。正面図が意匠の要部となるため、係争商標の図形と先行意匠の正面図がここまで酷似する場合、係争商標が異議申立人の標識、または被異議申立人と異議申立人の間に何らかの関係があるという誤認を招きやすいです。

3つ目は?

3つ目は、被異議申立人はタオバオで異議申立人のロボットの模倣品を販売した経緯があります。異議申立人がアリババプラットフォームに削除要請を申請した後、被異議申立人は応答しなかったため、模倣品リンクが削除されました。

このことから、被異議申立人には先行意匠を模倣する意図があり、悪意があることを証明できます。

以上のことから、係争商標は先行意匠の権利を侵害し、『商標法』第三十二条の規定に違反したと認定し、係争商標の不登録決定を出しました。

まとめ

上記判例には、平面商標でも立体意匠の意匠権侵害にあたる可能性があるという代表的な意義を示しました。

立体商標しか立体意匠の意匠権侵害にあたらないという見方もありますが、本判例で示されたように係争商標と先行意匠の要部が酷似し、商品にも密接な関連性を持ち、かつ被異議申立人には明らかな模倣や不正競争行為があった場合、不正登録を規制し混同誤認を避ける目的を果たすために、意匠権に対する権利侵害を認定する必要があります。

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