中国の人気インスタントラーメンシリーズが商標トラブル?

近頃、中国で有名なインスタントラーメン生産企業である「白象(バイシャン)の「多半」というシリーズ商品が、消費者を騙し、誤解を招いた疑いがあるとして世論の注目を集めています。白象社は、登録商標「多半」をインスタントラーメンの包装の目立つ位置に「多半(登録マークR)袋面」と表示していました(下図参照)。

多半袋面

 

中国語「多半」の意味

中国語において、「多半」には「半分を超える」という意味があります。また、「袋面」は「袋麺」とも理解できますし、「袋」と「面」を分けて「バッグ」と「ラーメン」という理解も可能です。「多半袋面」全体では、「通常より半袋分多く入っている」と解釈できます。

上図をご覧いただければ分かりますが、白象社が「多半」の右上に登録マークRを付けて、「多半」が登録商標であることを示そうとしました。しかし、その後ろに「袋面」と続いていますので、消費者が「多半」を単なる商標表示として認識するよりも、「多半袋面」全体を「通常より半袋分多く入っている」と認識する可能性が高いと考えられます。

既に市場の反応が明確な結果を示しており、多数の消費者が「多半 袋面」という表記を「通常より半袋分多く入っている」と理解しています。このような認識が実際の商品内容と異なる場合、消費者を騙し、誤解を招くことに繋がります。実際に消費者が「通常より半袋分多く入っていない」ことに気づき、白象社は批判の的となったのです。

なぜ「多半」が商標登録できたのか?

このような欺瞞的で消費者の誤解を招く可能性の高い商標の登録は、中国商標法第10条第1号第7項によって明確に禁じられているのにも関わらず、なぜ「多半」が登録できたのでしょうか?

白象社は2018年8月から、「多半桶(半カップ分多く入っている)」、「多半袋(半袋分多く入っている)」、「多一倍(一倍多く入っている)」、「多一半(半分多く入っている)」等似たような意味の商標を出願しましたが、いずれも拒絶されて登録はできませんでした。

多半桶」と「多半袋」の不服審判決定書によると、拒絶の理由は「商品の数量等の特徴について消費者に誤認を生じさせるおそれがある」という内容で、つまり『商標法』第10条第1号第7項に規定される欺瞞性がある商標に該当します。

しかし、「多半」だけの場合は、中国語では「半分を超える」という意味よりも「おそらく、たぶん」と解釈するのが一般的で、商品の数量を明確に示す文字ではなくなります

その商標の使用が消費者の利益を侵害するか?

しかし、商標が登録できたとしても、どのように使用するか、その使用が消費者の利益を侵害するかについても問題となります。

白象社がその製品において登録商標を使用する行為は一見すると合法的ですが、登録商標の周囲に他の文字を加えることによって、通常のインスタントラーメンより半袋分多く入っていることを思わせる行為が、登録商標専用権の濫用に該当し、『商標法』『不正競争防止法』『広告法』『消費者権益保護法』に違反する可能性があります。また、いかなる第三者も『商標法』第10条第1号第7項に基づき、当該商標について無効審判請求ができます。いずれにしても言葉遊びで消費者をミスリードすることは不適切と考えられます。

なお、登録商標に示された商品の特徴と商品の実際の特徴とが完全に一致している場合であっても、リスクが存在する点には注意しましょう。実務上、特に食品業においては、企業が商品の原料、味、数量、重量等の特徴を示す文字や図形を商標として使用するケースは多いです。もしその表示が単に商品の特徴を直接的に表示したものに過ぎず、商標として必要不可欠な識別力と商品の製造元(出所)を示す機能を有しないものであれば、たとえ登録されたとしても、結局は消費者に商標として認識されず、権利維持が困難となる可能性もあります。

商品名を検討する際は、商品の実態や特徴を表す表示に拘り過ぎずに、発想力・センスを発揮して特徴ある商標を考案することをお勧めします。

(北京恵利爾知識産権信息諮詢有限責任公司)


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