

外国語の略語(アルファベットの組み合わせなど)は、綴りが簡潔で、読みやすく、記憶に残りやすい上に、その意味によって製品やサービスの特徴を端的に表現できるという利点があります。そのため、多くの商標出願人がこのような略語を商標として好んで使用しています。しかし、中国商標の実務では、外国語の略語を関連性の高い商品や役務において出願した場合、「顕著性を欠く」として拒絶される事例が少なくありません。
例えば、中国商標第33712703号「USB」(第42類役務を指定)と第70635800号「GPS」(第9類商品を指定)は、いずれも中国商標法第11条(顕著性欠如)に該当するとして拒絶されました。その結果、一部の出願人は複数の外国語略語を組み合わせ、標識全体の顕著性を高める試みをしています。
では、この方法で本当に顕著性を補えるのでしょうか?
実際の事例:商標「MedGPT」
A社は第42類「医療目的の科学調査;コンピュータソフトウェアの保守」などを指定役務として、「MedGPT」という商標を出願しましたが、顕著性欠如を理由に拒絶されました。
拒絶査定に対する不服審判において、商標局は「‘Med‘は、常用英単語‘Medical‘(医療・医学)の略語であり、‘GPT‘は‘Generative Pre-trained Transformer‘の略語で、新しいAI技術の一種を意味する。当該標識を商標として医療目的の科学調査等の役務について使用すると、役務の内容や技術的特徴を直接表示するものと認識される可能性が高く、商標として必要な顕著性を欠く」と判断しました。
その結果、審判段階でもA社の出願は最終的に拒絶されました。
略語を組み合わせても顕著性は自動的に高まらない
この事例から分かるように、顕著性を欠く略語を複数組み合わせたとしても、新しい意味が生じたり、商標としての識別力が向上したりするとは限りません。
「MedGPT」の場合、「Med」は指定役務と密接に関連する医療分野を示し、「GPT」は広く知られるAI技術を指します。
したがって、関連公衆は「MedGPT」を「医療・医学に関係し、GPT技術を用いたもの」と理解する可能性が高く、その意味は役務内容を直接的に説明するものとなります。これは、指定役務の内容や業界・技術等の特徴に対する直接的な説明をしているに等しいと解釈されてしまいます。
結果として、A社が二つの外国語の略語を組み合わせたことで標識全体の顕著性の欠如を覆すことはできませんでした。
外国語略語の組み合わせが拒絶される理由
同様の事例として、第19類、第27類、第45類の商品/役務を指定した商標「5G-i PRO」や第5類の商品を指定した商標「MedSPA」も、標識全体の意味が指定商品・役務の内容や技術的特徴を直接示すものとして拒絶されています。
このような外国語略語の組み合わせによる商標が登録を禁止される主な理由は、概ね次の二点に集約されるものと考えられます。
- 出所識別力の欠如:消費者がその標識を見ても、商品やサービスの提供元を特定できない。
- 市場競争の公平性の確保:一般的・慣用的な略語を特定の出願人に独占させることを防ぎ、業界全体の公正な競争秩序を守るため。
外国語の略語を組み合わせることは一見創造的な発想に見えますが、商標としての識別力を確保する保証にはなりません。
実務上は、略語の意味・普及度・関連分野との結びつきを丁寧に検討し、消費者が出所を認識できる構成を意識することが、登録への近道と言えるでしょう。
(北京恵利爾知識産権信息諮詢有限責任公司)



