
2027年1月1日に施行される新『商標法』では、現行法の行政処罰規定が見直されるとともに、悪意による商標登録出願や商標の不適切な使用に関する罰金規定が整備・強化されています。処罰の対象となる主な行為には、以下のようなものが含まれます。
・禁止条項違反の認識がある出願: 標章が使用禁止規定に違反することを知りながら行う商標登録出願
・不使用前提・過度な出願(悪意的出願): 使用目的がなく、通常の事業・経営上の必要性を明らかに超えた商標登録出願
・登録商標の誤導的使用: 一般公衆に誤認を与える態様での登録商標の使用
・登録事項の無断変更: 商標登録者が所定の手続きを経ずに登録商標や登録事項(登録者の名義・住所等)を変更して使用する行為
・「馳名商標」の商業利用: 「馳名商標(著名商標)」という表示を、商品本体やパッケージ、広告宣伝などに直接使用する行為
1.悪意による商標登録出願行為について
新『商標法』第54条の規定では、商標登録出願人に次に掲げる悪意による商標登録出願行為のいずれかがあり、悪影響を及ぼしたときは、商標法執行担当部門が警告を与え、10万元以下の罰金を併科することができる。
(一)標章が使用禁止規定に違反することを明らかに知りながら、なお商標として登録出願すること
(二)使用目的がなく、かつ通常の事業・経営上の必要性を明らかに逸脱した商標出願、または欺瞞その他不正の手段による商標登録出願
(三)故意に他人の著名商標を複製・模倣・翻訳して出願すること、故意に被代理人若しくは被代表者の商標を無断で登録出願すること、又は故意に他人の先行する合法的権益を害する出願や、他人が既に使用し一定の知名度を有する商標を先取り出願することなど(第21条、第22条、第24条に違反する場合)
ほとんどの出願人は信義誠実の原則を遵守しており、上記条項に抵触することはありません。しかし、防衛目的や将来の事業展開への布石として、多区分にわたる大規模な商標出願を行うケースが存在します。実務上、このような出願に対しても審査意見書(オフィス・アクション)が発行され、大量出願の正当性と必要性について釈明を求められる可能性があります。
当所の見解としては、多区分への広範な商標出願を要する場合、当局からの指摘に備え、あらかじめ当該商標の使用実績を示す証拠(使用証拠)を収集・確保しておくことを推奨いたします。また、未だ使用に至っておらず将来の使用意思にとどまる段階であっても、事業計画書や市場調査報告書など、真摯な使用意図(商標の使用意思)を裏付ける資料を事前に準備しておくべきです。これにより、審査意見書を受けた際にも、出願の正当性と必要性を十分に立証・提示することが可能となります。
なお、商標が使用禁止規定を理由として拒絶査定を受けたものの、自社にとって極めて重要なブランドである場合には、まず専門家(弁理士等)へ相談のうえ、反論・争う余地があるか否かを精査することを推奨いたします。その上で、拒絶決定に対する再審査請求を行い、その決定にも不服がある場合は行政訴訟を提起することが考えられます。また、使用禁止規定に該当する標章は、登録の有無にかかわらず使用自体が禁止されるため、使用を開始する前に適法性を慎重に確認する必要があります。
2.登録商標の取消につながる可能性のある行為について
新『商標法』第56条の規定では、公衆を誤認させる態様で登録商標を使用したときは、商標法執行担当部門が期間を定めて是正を命じる。違法経営額が5万元以上であるときは、違法経営額の5倍以下の罰金を科すことができる。違法経営額がないとき、又は違法経営額が5万元に満たないときは、25万元以下の罰金を科すことができる。期間内に是正しないときは、国務院商標管理部門がその登録商標を取消す。
また、第57条第1項の規定では、商標登録者が登録商標を使用する過程において、登録商標、登録者の名義、住所又はその他の登録事項を所定の手続きを経ずに変更したときは、商標法執行担当部門は、期間を定めて是正するよう命じる。期限を過ぎても是正しない場合、5万元以下の罰金が科される。情状が重大な場合、国務院商標管理部門はその登録商標を取消す。
商標権者が登録商標を使用するにあたっては、実際の使用態様が登録標章と一致しているか、あるいは広告宣伝文句や製品パッケージ上の説明文と組み合わせることで、公衆に誤解や誤認を生じさせるおそれがないかに十分注意を払う必要があります。特に「公衆を誤認させる態様での登録商標の使用」は、昨今の行政実務において重点的な取締対象となっています。
3.「馳名商標(著名商標)」の表示を商品や宣伝に使用する行為について
新『商標法』第64条の規定では、生産経営者は、「馳名商標」の表示を商品、商品の包装若しくは容器に使用したり、又は広告宣伝、展示及びその他の商業活動に使用したりしてはならない。
前項の規定に違反した場合、商標法執行担当部門は是正を命じ、10万元以下の罰金を科す。
「馳名商標(著名商標)」は、公的機関が授与する品質や信用の認定・表彰ではありません。その本質は、個別の商標紛争・出願案件においてより広範かつ強力な法的保護を付与することにあります。具体的には、著名商標が有する高い知名度や顧客吸引力を不正に利用し、市場における混同や公衆の誤認を生じさせて権利者の利益を害するおそれのある商標の登録や使用を禁止する制度です。
仮に「馳名商標」という表示を製品パッケージや広告宣伝に利用すると、消費者に「公的機関から特別な認証・お墨付きを受けた高品質な製品である」という誤解を与えやすく、公正な市場競争を阻害する要因となります。そのため、『商標法』では「馳名商標」の文字・表示を商品本体やパッケージ、広告、その他一切の商業活動において直接使用することを厳格に禁止しています。
4.まとめ
新『商標法』は、悪意的な商標出願を未然に防止する(源流で取り締まる)のみならず、商標の使用過程における不適切行為の規制にも重点を置いています。2025年11月に国家知識産権局(CNIPA)が発表した「商標使用管理の強化に関する通知」の内容と併せ見ても、「商標の規範的な使用」は、今や極めて重要な実務課題となっています。したがって、商標出願人および商標権者の皆様におかれましては、事業上の必要性に応じた適切な出願と商標の適正使用を徹底するとともに、あらかじめリスクを評価したうえで出願戦略・方針を講じることを推奨いたします。
(北京恵利爾知識産権信息諮詢有限責任公司)



