譲渡

企業が会社を経営している中、自社の商標を他人へ譲り、または他人から商標を譲り受けることが必要となるケースがあります。

その場合、商標の譲渡手続きを行えば良いのですが、簡単に見える手続きでもリスクが存在し、事前に注意する必要があります。経営層の方たちにも中国の商標譲渡制度をよく理解してもらい、混同を引き起こす譲渡申請または悪影響を及ぼす譲渡申請を回避させることを目的とした商標の譲渡に関する指導意見を中国国家知的財産権局が発表しました。

ここでは、商標を譲渡する前に、どんなことを考慮しておいた方が良いか見てみましょう。

商標の譲渡が成り立つ大前提とは

まず、商標の譲渡が成り立つ大前提として、譲渡人・譲受人双方ともが『商標法』第四条ⅰ) で規定される「生産経営活動において、商標専用権を取得する必要がある自然人・法人・その他の組織」でなければなりません。実務上では、日本法人のほか、日本の個人や政府なども商標を登録する、譲り受けることができます。


また、類似商標が異なる経営者に所有された場合、混同を引き起こしやすいため、譲渡対象商標と同一・類似商品・役務における同一・類似商標は一括で譲渡しなければなりません。譲渡対象商標の所有者が所有する中国商標だけではなく、中国を指定したマドプロ登録も一括で譲渡すべきです。従って、商標を他人に譲渡しようとする前に、他にどの商標を同時に譲渡しなければならないか確認しておいた方が良いです。

譲渡申請が却下される要件

以下の状況は混同を引き起こす、または悪影響を及ぼすと認定され、譲渡申請が却下されますので、ご注意ください。

1) 団体商標、または証明商標を譲渡しようとした際、譲受人が『団体商標、証明商標の登録及び管理方法』で規定される条件を満たしていない場合。

2) 地名を含む商標を当該地名の地域外にいる譲受人に譲渡しようとした際、譲渡後に公衆が製品の産地、製造元について誤認・混同しやすい場合。

3) 企業名称(全称、名称の一部または略称を含む)を含む商標をほかの企業に譲渡しようとした際、譲渡後に混同を引き起こしやすい場合。

4) 特殊な意味を持つ商標を譲渡しようとした際、譲渡後に中国の政治、経済、文化、宗教、民族など社会公衆の利益、秩序を害する場合。

5) 商標代理機構『商標法実施条例』第八十七条ⅱ) の規定を違反し、商標を譲り受ける場合。

6) 所有者が数多くの商標を所有しており、何度も異なる譲受人に商標を譲渡し、正当な理由を説明できない、または使用意思を証明できない有効な使用証拠を提示できない場合。

7) その他、混同を引き起こしやすい、または悪影響を及ぼす状況。

中国で他人から商標を譲り受ける際の注意点

なお、他人から商標を譲り受ける際も、事前に以下事項を確認した後、譲渡の要否を決めた方が良いです。

1) 登録商標を譲り受ける場合:
登録商標が無効審判、不使用取消審判、未更新などが原因で無効になってしまう可能性があります。そのため、譲渡対象商標が『商標法』第四十四条ⅲ)、第四十五条ⅳ)で規定される無効審判の状況に該当するかここ3年の間に使用した経緯があるか更新期限を迎えているかを確認しておいた方が良いです。

2) 未登録商標を譲り受ける場合:
未登録商標が最終的に登録できない可能性があります。

3) 質権を設定した商標を譲り受ける場合:
民法典』の規定によって、質権設定者と質権者の協議で合意した以外、質権を設定した商標を他人に譲渡することはできません。従って、質権を設定した商標を譲渡する際は、書面による質権者の譲渡同意書を提出する必要があります。

4) 保全措置が講じられた商標を譲り受ける場合:
関連する法解釈により、人民法院が登録商標に対して保全措置を講じた場合、商標の譲渡が禁止される可能性があります。従って、保全措置が講じられた商標を譲渡する際は、書面による人民法院の譲渡同意書を提出する必要があります。

5) 他人に使用を許諾した商標を譲り受ける場合:
使用許諾期間内に先に締結した有効な使用許諾契約書に「使用も停止する」という条項がなければ、商標が第三者に譲渡されたとしても、先行の使用許諾契約のライセンシーに引き続き商標を使用する権利があります。従って、譲受人が商標権利者になったとしても、先行の使用許諾契約のライセンシーの使用を阻止することができません。このようなことを避けるため、事前に使用許諾届出の有無を確認した方が良いです。

以上のことから、商標の譲渡にはリスクがあります。上記に記載した内容を考慮した後、譲渡の要否を決定することをお勧めいたします。

参考資料(中国商標法と関連規定)

ⅰ) 『商標法』第四条
自然人、法人又はその他の組織が、生産経営活動において、その商品又は役務について商標専用権を取得する必要がある場合には、商標局に商標の登録を出願しなければならない。使用を目的としない悪意のある商標登録出願は拒絶しなければならない。
この法律の商品商標に関する規定は、役務商標に適用する。

ⅱ) 『商標法実施条例』第八十七条
商標代理機構がその代理サービス以外のその他の商標に関する登録出願又は譲受申請を行う場合、商標局はそれを受理しない。

ⅲ) 『商標法』第四十四条
登録された商標が、この法律の第四条、第十条、第十一条、第十二条、第十九条第四項の規定に違反している場合、又は欺瞞的な手段若しくはその他の不正な手段で登録を得た場合は、商標局は当該登録商標の無効宣告を行う。その他の単位又は個人は、商標評審委員会に当該登録商標の無効宣告を請求することができる。
商標局が登録商標の無効宣告を決定したときは、書面で当事者に通知しなければならない。当事者が商標局の決定に不服の場合、通知を受領した日から15日以内に、商標評審委員会に再審査を請求することができる。商標評審委員会は、請求を受領した日から9ヶ月以内に決定を行い、書面で当事者に通知しなければならない。特別な事情があり、延長することが必要なときは、国務院工商行政管理部門の許可を得て、3ヶ月間延長することができる。当事者が商標評審委員会の決定に不服の場合、通知を受領した日から30日以内に人民法院に提訴することができる。
その他の単位又は個人が商標評審委員会に登録商標の無効宣告を請求するときは、商標評審委員会は、請求を受領した後に書面で関係当事者に通知し、期間を定めて答弁を提出させなければならない。商標評審委員会は、請求を受領した日から9ヶ月以内に、登録商標の維持又は登録商標無効の宣告をする裁定を下し、書面で当事者に通知しなければならない。特別な事情があり、延長することが必要なときは、国務院工商行政管理部門の許可を得て、3ヶ月間延長することができる。当事者が商標評審委員会の裁定に不服の場合、通知を受領した日から30日以内に、人民法院に提訴することができる。人民法院は、商標裁定手続の相手方当事者に対し、第三者として訴訟に参加することを通知しなければならない。

ⅳ) 『商標法』第四十五条
既に登録された商標が、この法律の第十三条第二項及び第三項、第十五条、第十六条第一項、第三十条、第三十一条、第三十二条の規定に違反した場合、商標の登録日から5年以内に、先行権利者又は利害関係者は、商標評審委員会に当該登録商標の無効宣告を請求することができる。悪意のある登録の場合、馳名商標所有者は、5年間の期間制限を受けない。
商標評審委員会は、登録商標の無効宣告の請求を受領した後に書面で関係当事者に通知し、期間を定めて答弁書を提出させなければならない。商標評審委員会は、請求を受領した日から12ヶ月以内に登録商標の維持又は登録商標の無効宣告をする裁定を下し、書面で当事者に通知しなければならない。特別な事情があり、延長することが必要なときは、国務院工商行政管理部門の許可を得て、6ヶ月間延長することができる。当事者が商標評審委員会の裁定に不服の場合、通知を受領した日から30日以内に、人民法院に提訴することができる。人民法院は、商標裁定手続の相手方当事者に対し、第三者として訴訟に参加することを通知しなければならない。
商標評審委員会は、前項の規定により無効宣告請求を審査する過程において、関係する先行権利の確定が人民法院で審理中、又は行政機関で処理中の別案件の結果を根拠としなければならないときは、審査を中止することができる。中止の原因が解消された後は、審査手続を再開しなければならない。

 

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