

最近、中国ではブランド品の「邪道な買い方」が話題になっています。どのような買い方というと、いくつかの象徴的なパーツで構成される高級ブランド品(アクセサリー)を解体し、組み立て直すことによって、象徴的なパーツを含む別のアクセサリーに作り、安価に入手する手法です。
今回は高級ジュエリーブランド 「ヴァン クリーフ&アーペル」のカーネリアンブレスレットの例でご説明します。
1つのブレスレットを解体して5つペンダントに
「ヴァン クリーフ&アーペル」のカーネリアンブレスレットは、公式サイトの販売価格(日本円)で825,000円となっています。このブレスレットには5つの四つ葉のクローバーモチーフが付いていますが、これを解体した場合、1つあたりの価格は単純計算で165,000円となります。
これら5つのモチーフをそれぞれペンダントに加工することで、ネックレスチェーンの費用や加工費は当然発生するものの、その金額は正規品のカーネリアンネックレスの販売価格(公式サイトでは506,000円)と比較しても、大幅に安価に抑えられる可能性があります。


【イメージ】
このような手法により、本来は高価で手の届きにくいブランド品が、比較的身近な存在となります。一部の消費者にとっては、「コストパフォーマンス重視」という価格志向と、「ブランドを誇示したい」という消費欲求の双方を満たすものとなり、大きな満足感を得られると考えられます。
そして、正規ルートで購入した正規品である以上、商標権や著作権における「権利消尽の原則」が適用され、どのように処分・加工しても問題はないと考えられがちです。
しかし、このようなケースにおいても、果たして権利消尽の原則は必ず適用されるのでしょうか?
「品質保証機能」が商標の本質的機能の一つであることは明らか
中国『商標法』第7条第2項では、「商標を使用する者は、その商標を使用する商品の品質に責任を負わなければならない」と規定されています。また、同法第42条の規定では「(登録商標の)譲受人は、当該登録商標を使用する商品の品質を保証しなければならない」とあり、さらに同法第43条の規定は「(登録商標の)許諾者は、被許諾者が当該登録商標を使用する商品の品質を監督しなければならない。被許諾者は、当該登録商標を使用する商品の品質を保証しなければならない」としています。これらの規定から、「品質保証機能」は商標の本質的機能の一つであることは明らかです。
たとえ正規に購入したブレスレットであっても、消費者などがこれを独自に加工し、ペンダントに作り変えた場合、その製品がブランド側の定める品質基準を満たすとは考えにくいでしょう。このような加工行為により、ブランド側は当該製品について品質を保証できない状態に陥ります。その結果、ブランドが数十年にわたり築き上げてきた信用や評価を大きく損なうおそれが生じます。
したがって、このような加工品を販売等した場合、商標の品質保証機能を害するものとして、商標法上の問題が生じる可能性があると考えられます。
著作権侵害や詐欺に該当する可能性も
このような行為は、商標法上の問題にとどまらず、著作権侵害や詐欺に該当する可能性も否定できません。
たしかに、完全な「模倣品」とは言えないかもしれません。しかし、象徴的なパーツを解体・再構成することにより、実質的に同一のデザイン要素を有する装飾品を複数生み出す行為は、非典型的な複製行為として、著作権(複製権)の侵害に該当する可能性があります。
さらに、こうした加工品が二次流通市場において「正規品」であるかのように表示・販売され、消費者を誤認させたうえで高額で取引された場合には、詐欺行為として責任を問われる可能性も考えられます。
このように、正規品を用いた加工であっても、その態様によっては商標の本質的機能を害し、商標法や著作権法上の問題が生じ得ます。「正規に購入したから自由に処分できる」という単純な理解では済まされない点について、消費者・事業者の双方が十分に認識しておく必要があるでしょう。
(北京恵利爾知識産権信息諮詢有限責任公司)



