企業としては、経営上のニーズ(例えば、ブランドロゴのバージョンアップ等)によって、同一・類似商品において、些細な相違(例えば、フォントや背景色のみの変化)しかない登録商標を複数件持つことがよくあります。

他人がA商標に対して提起した不使用取消審判において、A商標の権利者が実際に使用しているものは、背景色だけがAと異なるA+商標であるというような状況もよくあります。

中国では、このような状況を「一人多標」(一人が些細な相違しかない登録商標を複数持つ)といいます。

このような場合、A+商標の使用証拠を商標局に提出した場合、A商標の使用として認めてもらえるでしょうか。

言い換えれば、A+商標の使用証拠で取消対象となるA商標の有効性を維持できるでしょうか?

判例を見てみましょう

上記疑問について、第652566号マドプロ登録マドプロ登録MAVICに関する不使用取消審判の不服審判の審査結果から、裁判所がこのような案件に対して、どのように処理したか考察しました。
本案では、商標所有者が第12類において、同じ文字「MAVIC」で構成される登録商標を3件所有しており、第652566号マドプロ登録マドプロ登録MAVIC(即ち取消対象商標)以外に第12765539号中国商標12765539号MAVIC及び第15676677号黄色い背景MAVICもあります。

また、商標所有者が提出した使用証拠は、黄色い背景の黄色い背景MAVICに対するものでした。

取消対象商標が指定期間内に使用されたことを証明できない

審査を経て、北京知的財産権裁判所は判決書の中で、「取消対象商標の所有者が複数の登録商標を保有している。実際に使用されている商標と取消対象商標の間にわずかな相違しかないとはいえ、提出された証拠が、取消対象商標以外の他の登録商標に対する使用を証明するにすぎず、取消対象商標が指定期間内に使用されたことを証明できない」という見解を述べました。従って、北京知的財産権裁判所が第652566号マドプロ登録マドプロ登録MAVIC取消を決定しました。

まとめ

『商標法』の規定では、登録商標を使用する際、登録した見本のままで使用すべきです。プラクティス上、些細な相違が許されることが多いですが、上記案件のように、取消対象商標がA商標で、実際に使用されている商標が背景色だけが異なるA+商標で、そしてA+商標も同所有者のものである場合、A商標を使用する意思がないと認定され、取り消されてしまう可能性もあります。


不使用取消審判制度の設置は、決して商標所有者を罰するためではなく、登録商標の合法的な使用を促すための制度です。中国の商標件数が年々増加する中、新規出願商標の登録がますます難しくなります。そのため、未使用商標に不当に占有されるリソースの再利用も重視すべきでしょう。

 

 

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