馳名商標とは、中国国家知的財産権局が中国国内において高い認知度と名誉を有する商標として公式に認定するものです。

長期的な使用・宣伝によって、馳名商標とその権利者との間に特定の商品または役務において、唯一無二の対応関係が形成されています。

他人に非類似の商品または役務において類似商標を登録・使用されれば、このような唯一無二の対応関係が崩壊し、場合によっては、馳名商標の名誉を傷つける可能性が生じます。このような現象は馳名商標の希釈化といいます。

 

判例

判例をご覧ください。

湯臣倍健社が2005年に商標第3839270号「湯臣倍健」(以下は引用商標という)を登録し、大量に使用・宣伝を行った後、当該商標が2012年に第30類の商品「非医用栄養液;非医用栄養粉」において馳名商標と認定されました。

一方で、他人(以下は原告という)は、2009年に第5類「殺虫剤;防虫剤;失禁用おむつ」等の商品において、商標第7695797号「湯臣倍健TANGCHENBEIJIAN」(係争商標という)を出願しました。

この係争商標が公告された後、湯臣倍健社に異議を申し立てられました。異議申立及びその不服審判を経て、中国国家知的財産権局が係争商標の登録不可という決定を出しましたが、原告はその結果が不服で北京知的財産権法院に提訴しました。

審決において、裁判所は以下の意見を述べました。

審決 一つ目

一、「湯臣倍健」は、造語(創造詞)であり高い顕著性を持つと思われます。係争商標は、引用商標を複製模倣したものに該当します。

審決 二つ目

二、引用商標が馳名商標であるため、関連公衆が係争商標を付する殺虫剤等の商品を目にした際、湯臣倍健社の馳名商標を思い浮かべるのが一般的です。ただ、湯臣倍健社自体は、殺虫剤等の商品を扱っていません。また、同一企業が非医用栄養品と殺虫剤等、全く異なる商品を同時に取り扱うという業界の慣例も存在しません。

そのため、関連公衆が係争商標を付した殺虫剤等の商品を目にした際、馳名商標を連想しやすいとはいえ、殺虫剤等の商品が湯臣倍健社によって提供されたもの、或いは、湯臣倍健社と何らかの関係があるのではないかという認識が生じないのが一般的です。

このような際、馳名商標「湯臣倍健」と湯臣倍健社の間に存在する「唯一無二の対応関係が崩壊することになります。係争商標の出願と使用は湯臣倍健社の馳名商標への希釈化に該当し、公衆を誤導し、湯臣倍健社の利益に損害を与えました。

 

まとめ

上記の判決が示すように、馳名商標について、他人が様々な商品や役務において使用することにより、そのイメージが分散されてしまい、特定の商品・役務の商標として強く印象付けられた消費者の認識が他の商品・役務に拡散され、弱められてしまいます。

それだけでなく、馳名商標が汚い、縁起が悪いと思われる商品(例えば、便器やお墓等)において登録・使用された場合、馳名商標の良好なイメージが壊されてしまうこともあり得ます。

このような商標の希釈化を防ぐには、馳名商標の権利者として、積極的に異議申立や無効審判等を通じて権利行使することをお勧め致します。

 

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