ポイント

多くの企業には自社名の全称を商標として登録したいという希望があります。

しかし、以前は普通に登録できたにも関わらず、ここ数年は登録することが難しくなりました。このような変化はなぜ起こっているのでしょうか?果たして自社名の全称商標は、最終的に審査を通過し登録できるのでしょうか。

今回の記事では、現在の中国における会社名の全称商標に対する審査傾向の変化、リスク、出願前の心構え、登録の可能性をアップさせるためのポイント等をご紹介します。

審査傾向の変化

中国では、2005年から2016年の間に実施されていた『商標審査基準』に会社名の全称商標が認められていたため、数多く登録されました。

登録された商標のうち、会社名全称が商品・役務の提供者を示すものに過ぎず、商標としての識別力に欠けるのではないかという新たな見解が出てまいりましたが、商標審査機関と裁判所の意見が必ずしも一致していなかったため、識別力に欠けるという理由で商標審査機関に拒絶されたものでも、裁判所に許可された例がありました。

しかし、2016年12月の『商標審査審理基準』の改正とともに会社名の全称商標が認められなくなったことをきっかけに、商標審査機構の見解が大きく変わり、会社名の全称商標が大量に拒絶されました。

不服審判を通じて登録できた判例が偶にあるものの、全体の審査傾向から、商標審査機関も裁判所も会社名の全称商標が識別力に欠けるという統一的な認識を持つようなりました。

また、この時期に、「会社名全称に識別力のある他の要素(図形など)を加えた場合、全体においては識別力がある」という見解が出てきましたが、目下の審査の実務では、国家知的財産局と裁判所の見解はいまだ不明確であり、案件によって全く異なる結論が出されることもあるというのが実情です。

自社名の全称商標の出願リスク

つきまして、会社名全称又はそれを含んだものを商標として出願することをお勧めいたしません。

その理由は3つあります。

  • 1つ目は、前述のように、現在の商標審査傾向によって、上記のような商標は識別力の欠如によって拒絶される可能性が高いです。
  • 2つ目は、消費者の識別習慣から、簡潔で覚えやすい標識が好まれるのに対し、一連の長い文字により構成された会社名の全称商標は、消費者にとって商標ではなく、ただの会社名として理解されやすいため、当該商標が自社商品又は役務に対し果たすべき効果も不十分と思われます。
  • 3つ目は、会社名全称又はそれを含んだ商標を将来他人に譲渡又は許可したい場合、他人の名義との不一致により、譲渡または許可できないリスクが生じます。

出願前の心構え

最後に、どうしても会社名全称又はそれを含んだものについて中国商標登録にチャレンジしたい場合、前述の登録リスクを認識したうえ、出願が順調に進まず、不服審判、ひいては提訴に至る可能性があるということを、予め想定しておきましょう。時間的・経済的コスト等がかかる割には、成功する可能性は低いという覚悟を持つ必要があるといれるでしょう。

登録の可能性をアップさせるためのポイント

また、下記3つのポイントがご参考になればと思います。

(1)会社名の商号部分に識別力があることを確保します。
(2)自社の会社名全称のみにより構成されたものを避けて、「会社名全称+会社LOGO又は識別力のある他の図形」(そのうち、会社名の占める面積をなるべく小さくする)のような組み合わせで出願します。
(3)初回の出願で識別力の欠如との理由で拒絶されれば、出願予定商標を商標として広く使用し、且つ既に比較的に高い知名度を獲得した証拠を用意した後、再出願します。再出願の際、『商標法』の使用による識別力の獲得に関する規定を持って抗弁することができます。

まとめ

総じて言えば、中国において、会社名全称又はそれを含んだ商標の登録の可能性が低いうえ、このような商標がたとえ登録されたとしても将来の使用や権利行使には不利な点が多いという観点から、出願自体はあまりお勧め致しません。

(北京恵利爾商標代理有限責任公司)

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