使用されていない登録商標の商標権を侵害した行為に対して刑事責任を追及すべきかについて、賛否両論があります。

肯定派の意見は、「行為者(権利侵害行為を行った者)が偽造した商品が登録商標の指定商品である場合、たとえ権利者が実際に生産していない又は第三人にライセンスを行っていない場合でも、登録商標の商標権を侵害する罪を構成する」です。

一方、否定派の意見は、「権利者が実際に生産しておらず、登録商標をその指定商品において使用していなければ、権利侵害された製品は存在しないと思われる。そのため、行為者の行為が登録商標の商標権を侵害する罪と認定されるべきではない」です。

この記事では、以下の理由で、肯定派の意見に賛成します。

 

『中華人民共和国刑法』の第213条の規定とは?

『中華人民共和国刑法』の第213条の規定によって、「登録商標権者の許諾を得ずに、同一種類の商品、役務にその登録商標と同一の商標を使用し、情状が重大な場合には、3 年以下の有期懲役に処し、罰金を併科又は単科する。情状が極めて重大な場合には、3 年以上 10 年以下の有期懲役に処し、罰金を併科する。」。

この規定から、刑法上では、登録商標の指定商品が必ず生産・製造され、存在しているものでなければならないということは、商標権侵害の罪を認定する要件ではありません。

そのため、充分な理由なしに勝手に法律解釈の範囲を狭めてはなりません。また、現実に防御商標などが多く存在することに鑑みて、もし登録商標の使用が罪を認定する要件になれば、権利者に対する保護は限られてしまいます。

 

判例1を見てみましょう

これに関しては、以下裁判所の判決も肯定派と同様の観点を持っています。


判例1をご覧ください。被告人宋氏は「美信」、「CITRACAL」という登録商標の権利者の許可を得ずに、「美信」、「CITRACAL」を付したカルシウム錠剤2万本余りを生産、販売しました。宋氏は模倣品の生産、販売に関する事実を認めましたが、抗弁理由の一つとして、「宋氏はかつて「美信」カルシウム錠剤の代理店でした。その後、中国大陸において「美信」カルシウム錠剤の販売が停止されたため、この時点で関連商標は5年近く使用されていません。商標法では、3年間連続して使用していない商標は、取り消すことができるという規定があるため、このような使用されていない商標に対して保護する必要がありません。被告人が生産したカルシウム錠剤の品質に問題がなく、主観的な悪意がないと思われ、その行為の社会的危害性も大きくない。」という意見を述べました。

被告人の抗弁理由に対し、裁判所は、「関連登録商標が数年使用されていないとはいえ、法定手続きを経て取り消されていない以上、有効な商標であり、他の有効な商標と同様に法律の保護を受けるべきです。被告人は許可を得ずに登録商標を使用した上で、他社に依頼し、カルシウム錠剤を生産・販売した行為は商標管理秩序を大きく崩し、市場経済秩序を乱し、消費者を欺瞞し、その利益を損なったため、社会的危害性が大きい。」という意見を述べました。

 

判例2を見てみましょう

判例2として、第251861号「松鶴」(以下は係争商標という)は、宜都達奥工貿有限公司が第19類の商品「セメント」において登録した商標であり、その有効期間は2016年5月29日までです。当該商標権利者は2007年11月25日に閉鎖され、その営業許可証も2010年7月14日に取り消されました。

被告人譚氏は、2011年末から「松鶴」を付したセメントを生産・販売しました。譚氏は模倣品の生産・販売の違法事実を認めましたが、抗弁理由の一つは、「侵害された商標は2007年から使用を停止し、その権利者は2010年7月に営業許可証を取り消されたため、被告人が「松鶴」商標を使用する行為は権利侵害にあたらず、犯罪の情状は深刻ではない」という内容です。

これに対し、裁判所は、「登録商標を盗用した罪は国家商標管理制度と商標権利者の商標専用権を侵害しました。権利者が2007年7月から係争商標を使用していないのは事実ですが、法律では許可を得ずに他人の登録商標を使用する行為は禁止されています。被告がそれに基づき権利侵害にならないという主張には法的根拠がありません。しかし、係争商標が長期間に使用されていないという事実を考慮すると、被告の行為は商標権利者に実際の経済的損失と名誉的損害を与えなかったため、主刑と付加刑を決定する際にこれを考慮することができます」という見解を述べました。

 

要するに

要するに、登録商標が実際に使用されていない場合、商標権侵害の罪が成立するか否かの判断に影響を及ぼさないというのが一般的ですが、量刑の際には、登録商標の使用状況を1つの要因として考慮する可能性があります。

 

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