前回は、9つのよくある地名を含む商標及び中国国家知的財産権局の指導意見について説明しましたが、今回は地名を含む商標の使用と権利行使の注意点等に関する指導意見について説明したいと思います。
前文で言及しましたが、地名を含む商標が必ずしも登録・使用できない訳ではありません。そこで指導意見では、登録された地名を含む商標の使用上、権利行使上の制限、注意点についても説明されました。それでは、詳細を見てみましょう。
地名を含む商標の使用上の制限、注意点について
商標権利者が登録済みの地名を含む商標を使用する際、登録が許可された商標見本及び使用を定めた商品・役務に限って使用すべきです。自ら商標見本のうちの地名部分を変えたり、目立つようにしたり、簡略化したり、内容を追加したり、変形したり、分割して使用したりすることは認められません。登録済みの地名を含む団体商標及び証明商標は、出願時に提出した商標の使用管理規則に従って使用すべきです。
地名を含む商標の権利行使上の制限、注意点について
他人が地名を商標として使用せず、ただの産地・所在地として使用する場合、善意による正当な使用に該当します。地名を含む商標の権利者は、登録済み商標のうちの地名と同じという理由で、他人の善意による正当な使用を禁止する権利はありません。商標権利者は信義誠実の原則を厳守すべきで、権利の濫用をすることは許されません。
他人が地名を使用する際、登録商標専用権を十分に尊敬すべきで、正当で合理的な使用の範囲を超えて使用することはできません。登録商標に含まれる地名を使用する際、地名をただの産地・所在地として、善意で正当に使用すべきです。他人商標の名誉をただ乗りしたり、商品・役務の生産元を混同させたり、商品・役務の産地を誤認させたりすることは認められません。
地名を含む商標の譲渡の注意点について
譲受人が地名を含む商標を使用する際、製造元または産地について誤認を生じさせやすい場合、譲渡が許可されません。
例えば日本企業が東京にあり、「TOKYO」を含む商標を登録しました。後日経営方針が調整され、登録商標の管理が大阪にある支社に移行したいという場合、商標の譲渡ができません。なぜなら、支社が大阪にあるので、「TOKYO」を含む商標を使用した場合、公衆に製品の産地、会社の所在地について誤認を生じさせやすくなるためです。
また、地名を含む団体商標、証明商標を譲渡する場合、譲受人が『団体商標及び証明商標の登録と管理方法』及び『商標審査審理指南』に規定される資格とその他の要求を満たさなければなりません。
まとめ
以上のことをまとめますと、地名を含む商標は使用上に制限があるほか、登録できても、他人が同地名を正当で合理的に使用すれば、禁止する権利はありません。また、地名を含む商標の譲渡は難しいと思います。
ということで、地名を含む商標を出願・使用したい場合、上記制限、注意点を全般的に把握した上で、商標が登録された後、使用することをお勧めいたします。