中国における商標と商号

中国における商標と商号の衝突について

今回は、商標と商号が衝突する場合の取り扱いについてご紹介いたします。

中国の『商標審査と審理標準』では、商標異議と無効審判のプロセスで、先行商号権の認定基準について、下記のように規定しています。

他人の先行登録、使用したかつ一定の知名度を持つ商号と同一若しくは類似する文字を商標として出願し、関連公衆の混同誤認を惹起し、先行商号の権利者の利益を損ねる可能性がある場合、他人の先行商号権への侵害に該当すると認定し、出願を却下し、若しくはその登録を無効とする。

以下、商標と商号の衝突に関する前提知識と、中国知的財産権局の考え方や取り組みについてご紹介いたします。

一、商標専用権と企業商号権の法的地位について

まず、商標専用権と企業商号権は異なる法的分野に属します。
民法総則の関連規定により、商標専用権は知的財産権に属し、企業商号権は人格権に属し、異なる法律によって規制されています。
商標の登録出願は「商標法」と「商標法実施条例」に従い、商号の登記は「会社法」、「企業名称登記管理規定」に従います。

商標は文字、図形、色彩などさまざまな要素から構成され、異なる経営者のブランドやサービスを区別するためのマークです。
一方、企業名は行政区画、商号、業界、組織の形式から順次構成され、異なる市場主体を区別するために用いられ、その中の商号は企業名称の核心部分であり、異なる企業を区別する主要な標識です。

商標専用権と企業商号権との衝突は、実質的には経営過程における市場混同行為であると認識されます。

二、商号と商標権の衝突を解決する法律プロセスについて

(一)後発の商号が先行商標権を侵害する場合

後発の商号が先行商標権を侵害することは、経営者が商号の使用過程において混同行為を行い、他人の商品であると、または他人と特定の関連性があると消費者を誤解させる行為です。これは不正競争行為に該当し、商標法、不正当競争防止法の関連規定によって解決されます。
商標法第58条の規定により、他人の登録商標や未登録有名商標を、企業名称の中の商号として使用することで、公衆を誤認させ、不正競争行為に該当する場合には、『中華人民共和国不正当競争防止法』に従って処理されます。

(二)後願商標が先行商号権を侵害する場合

現行商標法では、商標異議と商標無効審判のプロセスを設置して、先行企業商号権を保護することになっています。
商標法第32条では、商標の登録出願は他人の先行権利を侵害してはならない、と規定されています。
企業商号権は、この条に定められた先行権利の範疇に属します。後願商標が先行商号権を侵害する場合、後願商標が予備査定公告期間内にある場合、企業商号権者は商標法第三十三条の規定に従って異議を申立てることができます。
後願商標が登録された場合、商標法第四十四条の規定に従って無効審判を請求することができます。

三、悪意を持って他人の有名な商号を強奪する行為に積極的に打撃を与える

中国知的財産権局は商標異議と無効審判の段階において、悪意で他人の有名な商号を冒認出願、コピー、模倣、剽窃する行為に対して、打撃を絶えず強化していきます。
大量の他人の有名な商号を冒認出願、コピー、模倣、剽窃し、関連公衆の混同誤認を惹起しやすい案件の場合、当事者が民事活動において従うべきである誠実信用の原則に違反し、公平な市場競争秩序を乱したと認定し、商標法の関連規定によって、係争商標の出願が却下され、若しくはその登録が無効となります。

四、全国商号と商標登録情報の共有プラットフォームを構築する

中国知的財産権局は商標データベースと企業信用情報データベースの間のデータ共有を積極的に推進しています。
企業信用情報データベースとのデータ共有と応用をさらに推進するために、商標審査システム四期プロジェクトで、すでに統一したデータ共有アプリケーションプラットフォームを構築することを企画しています。
また、市場監督管理総局は商標データの開放と分析システムを作っています。
このプロジェクトが完成した後、市級以上の市場監督管理部門はこのシステムを通じてオンラインで関連商標情報を検索することができるようになります。

五、歴史的原因による商標と商号の共存に関する特殊な状況を適切に処理する

歴史的な理由で商標と商号が共存する特殊な状況については、「善意共存、包容発展」の原則と問題解決の提案が提出されました。
次はこれを深く論証し、各方面の利益を適切に均衡させ、良好な市場環境を作るために、より完備した制度保障を提供するとのことです。

(2019/9/19 北京恵利爾商標代理有限責任公司)