登録商標に対する不使用取消制度が設けられている目的は、商標の使用を促し、商品出所識別という商標の役割を果たすためです。破産・清算の状態では、商標の権利者が正常に経営できないという客観的原因から、その登録商標が使用できなくなるため不使用取消審判で抗弁する正当な理由と見なされます。しかし、破産・清算のすべてが登録商標を使用していない正当な理由となるわけではなく、権利者自身の使用意図や必要な準備の有無等も考慮に入れる必要があります。

中国における登録商標取り消しの経緯

例として、北京市高級人民裁判所が第二審判決を下した第5720789号商標(以下、係争商標と呼びます)に関する不使用取消審判案件をご紹介します。当該案件の流れがやや複雑なため、時系列でまとめます。
係争商標は、2006年11月13日にA社より出願され、2010年2月7日に登録になりました。
2017年5月17日に個人李氏が、三年間連続して使用していないという理由で、係争商標に対して取消審判をかけました。商標局はA社に対し答弁通知を発行し、2014年5月17日から2017年5月16日までの三年間の使用証拠を求めました。
2018年4月13日、A社が指定期間内に使用の証拠を提出出来なかったので、商標局は係争商標の取消を決定しました。
2018年5月3日にA社は、取消決定を不服とし、不服審判を提起しました。不服審判の理由としては「2014年11月以降、破産・清算の手続き中であり、不使用取消答弁の指定期間において、B社と商標の更新や譲渡の交渉、準備等を行っており、譲受人であるB社へ譲渡が許可されるまでの間に大規模に使用することができなかった」というものです。
2018年12月27日、A社は、係争商標のB社への譲渡申請を提出しました。
2019年4月20日、係争商標に関する不使用取消審判の不服審判の審理が終わり、取消維持の決定が発行されました。
2019年8月23日、係争商標の譲渡申請が許可され、係争商標はB社に譲渡されました。
2019年9月16日にA社とB社は不使用取消審判の不服審判決定を不服とし、裁判所へ提訴しましたが、第一審は、原告の訴訟請求を却下しました。
2020年5月7月、B社は第一審の判決を不服とし、北京市高級人民裁判所へ上訴しましたが、同裁判所は第二審の判決で「提出された証拠は、係争商標が指定期間内に、許可された商品において誠実且つ合法的、有効的、商業的に使用されていることを証明できず、Aが倒産清算前の1年近くの間に係争商標を使用する意図又は必要な準備もしていないだけでなく、B社も指定期間後に許可された商品において、係争商標を持続的に使用する証拠も提出できなかった」という意見を述べ、原告の請求を却下しました。


破産・精算の状態で登録商標が取り消しされないためには何が必要?

上記判例が示すように商標の権利人が破産・清算状態となったことが、必ずしも登録商標の未使用の正当な理由となるわけではなく、商標の権利人が商標を使用する意図及び実際に使用するための必要な準備がなされたか否か等も考慮されます。
これに関しては、例えば、破産・清算前の商標使用状況が考慮されます。登録以後、 権利人が商標を未使用の場合、商標の商品出所識別の機能を発揮できていないことから、不使用取消審判において破産・清算の状態であったことが、 合理的な抗弁理由とはなりません。
また、破産・清算期間と指定期間の関係も考慮される要因の一つです。破産・清算開始日が指定期限の開始日より遅い場合、破産・清算前の使用証拠を提供し、破産・清算により登録商標の使用を中断したことを証明する証拠を提出する必要があります。
最後に、譲渡を伴う場合は元の権利人と譲受人の商標に対する使用準備又は使用状況を考慮したうえで、実際の使用意図があるか否かも判断材料となります。

中国商標出願サービス

圧倒的コストパフォーマンス!
安心の日本語対応で日本企業の皆さまをサポート!
中国商標出願のことならアイアールへ

中国語法務関連翻訳

長年にわたり確かな実績 !
品質確保システムにより、リーズナブルな価格で確かな品質の翻訳を