他人商標を検索キーワードに設定し集客する行為は商標権侵害となる

はじめに

皆さんは、検索エンジンで特定の「ブランドA」を検索した際、検索結果のトップに「ブランドB」の情報が表示され、思わずクリックしてしまった経験はありませんか?時には、そのままブランドBをAだと誤認してしまうケースも少なくありません。

これは、ブランドBの運営者が検索連動型広告(リスティング広告)を利用し、あえて他社であるブランドAの商標をキーワードとして設定しているために起こる現象です。消費者がAを探している瞬間に、最も目立つ位置へBを割り込ませるこの手法。果たして、法的にはどのようなリスクを孕んでいるのでしょうか。実際の事例をもとに詳しく解説します。

具体的な事例

本件の当事者であるA社は、世界的に知られるアートトイ(デザイナーズトイ)メーカーです。同社は自社製品のブランド保護のため、以下の登録商標を保有しています。

  • 対象商標: 「泡泡玛特(POP MART / ポップマート)」、「Molly(モリー)」など
  • 登録区分: 第28類: 玩具、自動・コイン作動式ゲーム機など
          第35類: 広告、商品の展示、自動販売機の貸与など

A社がある検索エンジンで自社の登録商標である「泡泡玛特(POP MART)」や「Molly(モリー)」を検索したところ、検索結果の最上部(広告枠)に表示されたのは、A社の製品情報ではなく、B社が掲載した広告でした。
さらに、その広告リンクをクリックした先のページには、以下の内容が表示されていました。

  • B社による加盟店・代理店の募集情報
  • 「泡泡(ポップ)ブラインドボックス」プロジェクトに関する問い合わせ用の
    チャット窓口

A社の主力商品は、まさにこの「ブラインドボックス(中身の見えないフィギュア)」です。消費者がA社の商品を探している隙を突き、自社のビジネスへと強引に誘い込む。この巧妙な誘導が、大きな問題となりました。

裁判所の判断

A社は、B社が自社の承諾を得ることなく登録商標を広告キーワードとして無断使用し、検索結果に自社広告を表示させた行為は「商標権侵害」に該当すると判断し、B社に対し、以下の内容を求めて提訴しました。

  • 侵害行為の差し止め: キーワード設定および広告表示の即時停止
  • 影響の払拭(名誉回復): 誤認した消費者に対する適切な措置
  • 損害賠償: 被った経済的損失、および調査・訴訟に要した合理的費用の支払い

これに対し、被告であるB社は全面的に争う姿勢を見せ、主に以下の2点から「商標権侵害は成立しない」と反論しました。

■商品の非類似性:
自社が取り扱っているのは「おもちゃの自動販売機(什器)」であり、A社の権利範囲である「おもちゃ(玩具)」とは、商品としての性質も用途も異なる。したがって、両者は類似商品に該当しない。

■商標の不一致:
自社が実際に使用している表記は「泡泡马特」や「molly」である。A社の登録商標である「泡泡玛特」や「Molly」とは、漢字の一部や大文字・小文字が異なっており、完全に一致するものではない。

審理の結果、第一審裁判所はB社の主張を退け、以下の判断を下しました。

B社がA社の承諾を得ることなく、「泡泡玛特(正式商標)」のみならず、これに酷似させた「泡泡马特」や「molly」を広告キーワードとして設定し、検索結果の最上位を独占する行為は、法的な「商標的使用」に該当すると認定しました。

さらに裁判所は、B社の反論を退け、以下の通り商品および商標の類似性を認定しました。

■商標の同一・類似性:
B社が使用した名称は、A社の登録商標と「同一」または「類似」している。
■商品・役務の密接な関連性:
B社が扱う「おもちゃの自動販売機」と、A社の指定商品である「おもちゃ」および指定役務である「自動販売機の貸与」は、密接な関連性がある。
■混同の惹起(じゃっき):
上記の理由から、一般の消費者が両者を関連性のあるものとして混同・誤認する可能性が高い。

以上の審理に基づき、第一審裁判所はB社の行為を「商標権侵害」と判断し、B社に対し、侵害行為の差し止め、不当な影響の払拭、ならびに経済的損失と合理的費用の賠償を命じる判決を下しました。

フリーライド行為は、公正な競争秩序を乱すだけでなく、明確な商標権侵害に該当

インターネットビジネスが急速に発展する現代において、検索エンジン広告(リスティング広告)は、商品やサービスの認知度を高め、商業的利益を最大化するための不可欠なツールとなっています。

しかし、その利便性の裏で、一部の事業者が他社の著名なブランド力に便乗し、他人の商標をキーワードとして不正に設定することで集客を狙うケースが後を絶ちません。こうした「ブランドへのタダ乗り(フリーライド)」行為は、公正な競争秩序を乱すだけでなく、明確な商標権侵害に該当します。

特筆すべきは、B社の商品「おもちゃの自動販売機」と、A社の指定商品・役務である「おもちゃ」や「自動販売機の貸与」が、形式上の『区分表』に規定された類似商品・役務においては類似とされていない点です。

しかし裁判所は、形式的な区分よりも実態を重視しました。B社が他社の有名商標をキーワード設定して広告を表示させる行為は、消費者に「商品の出所(どの会社のものか)」について極めて容易に誤認を生じさせるものであり、商標権者と消費者の双方の法的利益を害すると判断したのです。

経営者は「誠実信用の原則(信義則)」を遵守し、他社のブランド力に便乗する「フリーライド」や「安易な人気取り」を慎み、他者の法的権利を侵害しないよう細心の注意を払うことが求められます。

(北京恵利爾知識産権信息諮詢有限責任公司)

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