

登録済みの著名商標の効力は、非類似の商品や役務にまで及ぶ可能性がある
中国『商標法』第13条第3項では、「非同一又は非類似の商品について登録出願した商標が、中国で登録されている他人の馳名商標(著名商標)を複製、模倣又は翻訳したものであって、公衆を誤認させ、当該馳名商標登録者の利益に損害を与え得るときは、その登録をせず、かつその使用を禁止する」と規定されています。
この規定により、登録済みの著名商標の効力は、非類似の商品や役務にまで及ぶ可能性があります。では、この「非類似の商品・役務にまで及ぶ排他的効力」は、具体的にどのように実現されるのでしょうか。また、あらゆる非類似商品・役務に対してその効力が及ぶものなのでしょうか。具体的な事例から探ってみましょう。
具体的な事例
A社は、「不動産の管理、代理、貸与」などのサービス(役務)において、登録商標「貝殻」を保有しています。
同社は、B社が自社の営業所やSNSアカウント、さらには請負った内装工事現場など、多岐にわたる場面で継続的に「貝殻装飾」という標識を使用していることを確認しました。A社はこれが自社の商標権を侵害するものと判断し、訴訟を提起しました。
訴訟においてA社は、自社の商標「貝殻」が不動産関連サービスにおいて極めて高い知名度を有することを証拠として提出しました。その上で、商標法に基づき「貝殻」を著名商標(馳名商標)として認定するよう求めるとともに、非類似の役務に対しても禁止権(差止請求権)を行使できるよう主張しました。
裁判所の判断
審理を経て、裁判所は以下の通り判断を下しました。
1. 著名商標認定の必要性
まず、A社の登録商標「貝殻」が指定する「不動産管理」等の役務と、B社が標識を使用している「内装工事」は、同一または類似の役務には該当しません。そのため、本件の判断には「貝殻」が商標法上の著名商標(馳名商標)に該当するか否かの認定が必要となります。
2. 商標の知名度と影響力の認定
A社が提出した証拠により、商標「貝殻」は長年の継続的な使用と宣伝を通じて、市場において強固な識別力を獲得していることが証明されました。具体的には、アプリの膨大なダウンロード数、全国規模の店舗展開、多数の受賞歴などが考慮され、関連する公衆の間で極めて高い知名度と影響力を有すると認められました。また、過去の司法・行政判断においても繰り返し保護・認定を受けてきた実績も重視されました。
3. 被告の過失と混同の恐れ
B社は内装工事業者として、高い知名度を持つA社の商標を認識すべき立場にありながら、あえて回避義務を怠りました。その上で、営業所やSNS、施工現場等で「貝殻装飾」の標識を継続的に使用した行為は、一般消費者に「A社のブランド拡張である」との誤認混同を生じさせる蓋然性が極めて高いと判断されました。
4. 結論
裁判所は商標「貝殻」を著名商標と認定し、非類似の役務についても禁止権(差止請求権)の行使を認めました。B社の行為は商標権侵害に該当するとして、当該標識の使用差し止めを命じました。
本事例から分かる通り、中国における著名商標の認定は「個別案件原則(事件ごとの原則)」に従います。著名商標としての保護を求める当事者は、商標の出願登録や使用に関する紛争が発生した際に初めて認定を申請することができ、裁判所や商標局は、その紛争解決に「認定が必要である」と判断した場合にのみ、事案ごとに著名商標として認定し、特別な保護を付与します。
商品・役務が同一または類似しない場合、より強力な保護を与えるか否かの要素とは
一方で、非類似の商品・役務に対する排他的効力は無制限という訳ではありません。紛争当事者の扱う商品・役務が同一または類似しない場合、以下の要素を総合的に考慮した上で、より強力な保護を与えるか否かが決定されます。
- 両商標の類似度
- 商品・役務間の関連性
- 実際の使用状況
- 混同を生じさせる可能性
- 著名商標権者および関連公衆の利益を害する恐れ
前述の事例において、B社は内装工事業者でしたが、「住宅購入者は内装工事を必要とする場合が多い」という点で、不動産業務と内装工事には極めて密接な関連性があります。
確かに『類似商品・役務区分表』の規定上は、両者は非類似とされます。しかし、実際の事業活動や社会通念に照らせば、両者の商標が共存することで、消費者は「貝殻装飾」を「貝殻」ブランドの事業拡張であると誤認する可能性が非常に高いと言えます。その結果、A社および消費者の利益を損なうと判断されたため、今回の差し止め請求が認められたのです。
(北京恵利爾知識産権信息諮詢有限責任公司)



