確信犯?芸能人プロデュースのアパレルブランド”MLGB”、公序良俗違反で商標無効

有名人アパレルブランドの商標問題

略語にはいろいろな意味がありますよね。
弊社も「日本アイアールのアイアールって何の略?」と聞かれることがしばしばですが、勿論「Investor Relations(投資家向け広報)」なわけはなく、昨今カジノ方案で話題の「Integrated Resort(統合型リゾート)」であるわけもなく、「Information Retrieval(情報検索)」が正解です。創業当時の1974年、将来こんなに沢山の「IR」が生まれるとは想像できなかったと思いますが・・・。
今回はそんな略語にまつわる商標登録のお話です。

このほど、中国の人気俳優、李晨(リ・チェン)とこれまた人気歌手の潘瑋柏(ウィル・パン)が手掛けるアパレルブランドに使用されていた商標「MLGB」が無効となりました。
2015年に無効宣告請求がされてから実に3年半、一体どのような顛末なのでしょうか。

2019年3月10日付の民主与法制時報によると、李晨と潘瑋柏が代表を務める上海俊客公司が当該商標を出願したのは2010年12月。その後、第25類のアパレル製品を指定商品として2011年12月末に登録されました。
しかしその後、2015年に某個人から無効宣告請求を受けます。その理由は、「当該商標は人々に宜しくない用語を容易に想起させ、アパレル製品に付して使用することは社会主義の道徳や風習を害し、悪影響を与える」というものでした。これは中国商標法第10条1項8号違反の無効理由にあたります。

実はこの「MLGB」という商標、当初から上海俊客は「My Life is Getting Better」を略したものだと主張していたのですが、中国人にとってはそう言われてもどうにも馴染みのない略し方。そして何より問題だったのが、この「MLGB」という言葉がいわゆるネットスラングで、相手を罵る際の隠語(流石に直訳を記載することは避けます)として有名だったということです。

中国の人気スター2人がプロデュースしているブランドですから当然注目度も高く、「おいおいMLGBって・・・」と物議を醸していたことも事実で、その中での前述の無効宣告請求がされました。
上海俊客も反論の証拠提出などの対応を行いましたが、商標評審委員会の認識は、「上海俊客の提出した証拠が、その(略称の)含意が社会の人々に広く知られていることを示すのは難しく、逆に、社会の人々は容易に「MLGB」が公序良俗に反する言葉だと認識するだろう」というもので、2016年11月に下した結論は、「当該商標はインターネット上などのソーシャルプラットフォームで広く使用されており、マイナスで品格に欠ける意味を有する。商標として使用することは社会主義の道徳や風習を害し、悪影響を与える」ため、当該商標を無効とするというものでした。

上海俊客はこれを不服として北京市人民高級法院に上訴しましたが、北京高級人民法院は、商標「MLGB」に外国語の単語として固有の意味はないことは認めながらも、インターネットが人々の生活に不可欠になっているという社会状況を鑑み、特に若者に悪影響を与えるという観点から、原判決維持の判決を下しました。ですが、この判決にあたってはもう1つの決定的理由があったと見られています。実は上海俊客、「MLGB」と同時に「caonima」と「草泥馬」(※分かり易いよう日本語漢字にしてあります。英語商標と読み方は同じです)という商標の登録にも成功していますが、実はこれらの言葉の漢字を変えると、「MLGB」に負けず劣らずの卑猥な意味。この事実が、上海俊客の行為には悪意があるという申立人の主張に説得力を与えたようです。

本件は「確信犯」と見られるため、傍から見ていても「これは商標を取り消されて当然」と思われる方が多いと思いますが、もし皆さんが中国の最近のトレンドを知らずに隠語を想起させるような表記で商標を出願してしまったら?・・・これは意外と他人事ではない問題です。

中国語ネーミングを行う際には、当然のことながら「マイナスの意味はないか」「どこかの方言の読み方の場合は問題ないか」などの点をかなり慎重に検討しますが、アルファベット商標の場合にも、実は想像以上に注意が必要なようです。特に文字数の少ない略語の場合、特定の意味を持つことが少ないので識別力の問題が生じにくいという点がメリットの1つになるかもしれませんが、その分、スラングにバシッと嵌ってしまうリスクもあると考えられます(中国にも当然、アルファベットを交えたスラングはありますからね)。

これからの時代、中国で使用する商標を考えるには、ネットでの流行語も含めて十分なチェックが欠かせないですね。

(日本アイアール A・U)

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