

中国市場で自社ブランドの模倣品・商標権侵害対策を進めるうえで、まず確認対象になりやすいのがタオバオ(淘宝/Taobao.com)です。タオバオは中国を代表する小売ECプラットフォームの一つで、幅広い商品が流通しており、消費者の日常的な購買行動の中に深く入り込んでいます。
そのため、もしタオバオ上で自社ブランドの模倣品や商標権侵害が疑われる出品を見つけた場合、単に「中国ではよくあること」として放置するのはおすすめできません。模倣品や商標権侵害が疑われる出品を放置すると、ブランド価値の低下、価格下落、購入者からの信用低下につながるおそれがあります。
この記事では、タオバオで自社ブランドの模倣品や商標権侵害が疑われる出品を見つけた場合の対応策を、実務の流れに沿って解説します。
タオバオとは? 模倣品対策の観点で見る特徴
タオバオは、中国で広く利用されている大手ECプラットフォームです。アリババ系の主要ECプラットフォームの一つであり、幅広い商品と多様な出店者が集まる巨大なマーケットになっています。
模倣品対策の観点で見ると、タオバオには二つの特徴があります。
一つは、出品数が非常に多く、同一または類似の商品が見つかりやすいこと。もう一つは、大規模プラットフォームである分、知的財産権侵害に対するオンライン申立て制度が用意されていることです。
タオバオを含むアリババ系ECプラットフォームでは、知的財産権侵害の申立てを行うためのオンラインプラットフォーム(IPP)が用意されています。権利者またはその代理人は、本人確認資料や商標登録証などの権利証明資料を登録したうえで、侵害が疑われる出品リンクごとに申立てを行います。
もっとも、申立て制度が整っているからといって、模倣品対策が不要になるわけではありません。出品数が多く流通規模も大きいため、1件削除しても別店舗・別リンクで再出品される可能性があります。実務上は、知的財産権侵害申立て・削除申請の仕組みを活用しつつ、継続的に監視し、必要に応じて売り手側からの反論や追加資料の提出にも対応していくことが重要です。
このように、タオバオには知的財産権侵害への申立て制度が用意されている一方、出品数や流通規模が大きいため、継続的な監視と対応が重要になります。
タオバオで見つかりやすい模倣品の典型パターン
タオバオで注意したいのは、いわゆる露骨な偽物だけではありません。実務上は、次のようなパターンも問題になりやすいです。
1. 商品画像の流用
正規品の公式画像や販促素材を流用しながら、実際には別物を販売しているケースです。見た目だけでは真贋判断が難しいこともあります。
2. ブランド名・商品名・商標への便乗
商標そのものを使う場合だけでなく、ブランドを想起させる表記や類似ワードを商品タイトルに入れて集客しているケースもあります。
3. 極端な低価格
外見だけでは判別しづらい場合でも、価格は重要な確認材料になります。正規品価格とかけ離れた低価格で販売されている場合は、模倣品や非正規流通品の可能性を疑うきっかけになります。
ただし、価格が安いことだけで直ちに知的財産権侵害と判断できるわけではないため、商標表示、商品画像、包装、仕様、販売者情報などとあわせて確認する必要があります。
4. 出店者情報が不透明
正規代理店一覧にない店舗、販売元情報が不自然な店舗、所在地や連絡先の信頼性が低い店舗は注意が必要です。もっとも、正規代理店ではないことだけで直ちに模倣品や権利侵害品と断定できるわけではありません。実際には、商標の使用態様、商品画像、包装、ロゴ表示、正規品との相違点などを総合的に確認する必要があります。
5. 同一商品が複数店舗から横展開されている
1店舗だけの問題ではなく、同じ画像・同じ説明文・近い価格帯の商品が多数の店舗で出ている場合は、継続的な監視が必要になります。
タオバオで模倣品・商標権侵害が疑われる出品を見つけたら?
タオバオで怪しい出品を見つけた場合、感覚だけで判断するのではなく、まずは証拠を整理することが大切です。まずは証拠を整理することが大切です。
《初動で確保しておきたい情報》
- 商品URL
- 店舗URL
- 店舗名
- 商品名
- 掲載画像
- 販売価格
- 取引実績やレビュー情報
- 確認日時が分かるスクリーンショット
重要なのは、単に「怪しいページがあった」で終わらせず、後で削除申請や社内報告に使える形で情報を残すことです。
注意点:疑わしい出品でも、削除には具体的な根拠が必要
低価格であること、正規代理店ではないこと、非正規流通品であることだけでは、直ちに知的財産権侵害として削除できるとは限りません。実際の申立てでは、商標の無断使用、商品画像の流用、包装・ロゴ表示の相違、正規品との違いなどを具体的に整理することが重要です。
削除申請までの基本的な流れ
タオバオを含む中国の大手ECプラットフォームでは、知的財産権侵害が疑われる出品について、権利者またはその代理人が申立てを行う仕組みが用意されています。実務上の流れは、概ね次のようになります。
1. ECサイト内調査
まず、タオバオ内でブランド名、商品名、中国語表記、型番、商標、ロゴ、画像流用の有無などをもとに調査し、疑わしい商品や店舗を洗い出します。
2. 侵害判断・真贋識別資料の整理
削除申請では、「なぜ知的財産権侵害が疑われるのか」を具体的に示す必要があります。たとえば、下記のような情報を整理していきます。
- 正規品との外観差異
- ロゴ表示の違い
- パッケージ差異
- 仕様の不一致
- 正規品価格とかけ離れた販売価格
- 正規流通経路にない販売者であること(※これだけで侵害を基礎づけるのではなく、他の事情とあわせて整理します)
3. 権利証明資料・代理権限資料の準備
申立て前には、本人確認資料や商標登録証など知的財産権の証明資料、必要に応じて委任関係を示す資料などの準備が必要になる場合があります。
4. 出品リンクごとの権利侵害申立て
準備した権利情報をもとに、侵害が疑われる出品リンクごとに申立てを行います。問題のある出品が複数ある場合は、リンク単位での対応が必要になります。
5. プラットフォーム側の審査・相手方対応
プラットフォーム側が提出情報を確認し、申立てが認められれば、対象リンクの削除等の措置が取られます。一方で、売り手側から反論が出ることもあり、その場合は追加資料の提出や再整理が必要になることがあります。
削除申請にどれくらい時間がかかる?
企業担当者が気にしやすいのが、「見つけてからどのくらいで削除できるのか」という点です。
ただし、これは一律には言えません。処理期間は次のような要素で変わります。
- 権利証明資料の登録や準備が済んでいるか
- 真贋判断が明確か
- 出品リンク数が多いか
- 売り手側から反論があるか
- 追加資料の提出が必要か
そのため、断定的な日数を書くよりも「資料の整い具合や相手方対応の有無によって変動する」と説明するほうが実務的です。
タオバオの模倣品対策が“都度対応”だけでは足りない理由
タオバオで模倣品や商標権侵害が疑われる出品を見つけた場合、1件ごとの知的財産権侵害申立て・削除申請は可能です。ただ、実務では次の問題が起こりやすくなります。
同種出品が次々に見つかる
1リンク削除しても、別店舗・別URLで再出品されると、都度対応だけでは追いつかなくなります。
社内で真贋判断の負荷がかかる
担当者が中国語ページを見ながら、画像、価格、仕様、販売者情報を確認し続けるのは簡単ではありません。
権利証明資料や除外対象の整理が必要になる
削除申請を進めるには、権利証明資料だけでなく、正規代理店や正規流通先を整理しておく必要が出る場合もあります。
反論対応や補充資料が発生する
一度申立てを出せば終わりではなく、申立て不成立や反論への対応が必要になることがあります。そのため、企業によっては「まず監視で状況を把握し、削除対象を精査しながら継続的に申請する」という体制のほうが現実的です。
監視と削除申請を外部に任せるという選択肢
タオバオ対策では、1件の模倣品を見つけた時点では「社内でも対応できそう」に見えることがあります。しかし実際には、次のような作業が連続して発生します。
- 関連出品の洗い出し
- リンク一覧化
- スクリーンショット保存
- 真贋判定資料の整理
- 権利証明資料の準備
- 個別リンクごとの申立て
- 結果確認
- 必要に応じた追加対応
特に、同種商品が複数店舗に広がっているケースでは、監視と削除申請を都度社内で回すのは大きな負担になりがちです。そのため、監視から削除申請までをまとめて外部に委託することは、現実的な選択肢の一つといえます。
日本アイアールでは、中国現地拠点との連携を活かし、タオバオをはじめとする中国主要ECサイトにおける模倣品・商標権侵害出品のウォッチング、侵害判断資料の整理、知的財産権侵害申立て・削除申請の支援を行っています。中国語ページの確認や継続監視にかかる社内負担を抑えながら、実務的に対策を進めたい企業様は、お気軽にご相談ください。
まとめ:タオバオで模倣品・商標権侵害が疑われる出品を見つけたら、放置せず初動対応を
タオバオは出品数が多く、模倣品や紛らわしい出品が見つかる可能性があるプラットフォームです。
そのため、模倣品や商標権侵害が疑われる出品を見つけた場合は、まず対象リンクや店舗情報を整理し、知的財産権侵害申立て・削除申請の可能性を見極めることが重要です。
また、同種出品が複数に広がっている場合は、単発対応ではなく、継続監視を前提にした運用体制を整える必要があります。社内だけで対応するのが難しい場合は、監視から削除申請までをまとめて外部支援に任せることで、より効率的にブランド保護を進めやすくなります。
(日本アイアール株式会社 商標担当 S・F)



